夢の実現に向けて
比羅夫に住みついた平成7年には、まさか自分がこんなものまで作れるようになるなんて思ってもいませんでした。
前オーナーのログハウス作りを手伝ったり、宿の補修を重ねるうちに、自分の作品を作ってみたい。そういう思いがだんだん強くなってきました。それは木に対する純粋なあこがれと、この宿はこれから自分が作っていくんだという決意の現れでもありました。
準備
平成10年7月。兼ねてからの夢であったログハウス作りを実現させようと動き出しました。
ログハウスの使用目的は客室ではなく、スタッフルームです。宿の部屋数が少ないので、お客さんが満員になると車で寝たりしているのですが、冬の時期やアルバイトを雇ったときはそうもいかず、スタッフルームが1つほしかったので、この機会に建ててみようと思い立ったのです。ただ、8畳のリビングと6畳ほどのロフトという、至って簡単な作りなので、ログハウスと言うよりは“丸太小屋”と呼んだ方がぴったりくるかもしれません。
これまで、駅の周りにいい土地を探していたのですがなかなか見つからず、一番目を付けていた駅舎の隣の土地も、当初JRから使用許可が下りずにいました。4月にJR倶知安駅の駅長さんが変わり、結構話せる人だったのでダメ元でお願いしてみると、今度はうまく話が運び、許可を得ることが出来ました。
まず手始めに、どんな間取りにするのか決めないと何もできないので、簡単な設計図を書きました。外観だけならそれでもいいのですが、壁に隠れている場所の構造まで頭に入れておかないと材料を発注することもできません。そこで、ログハウスの作り方が詳しく紹介されている本を探し始めました。インターネットを使って調べていくうちに、1冊の素晴らしい本を見つけだすことが出来ました。その本は「夢の丸太小屋に暮らす」で有名な地球丸から発行された「手づくりログハウス大全」。おそらくログハウスを作ることだけに関して、ここまで詳しく、しかもわかりやすく解説された本は他にないでしょう。さらに発行が6月30日というから、まさにGOOD TIMINGでした。そして7月から8月にかけて約1ヶ月間、この本でログハウスの構造を勉強し、設計図を完成しました。
当初材料は、一人でも持ち運べるように軽く、そしてより安くということで、間伐材を使うつもりでいました。ところがちょっとしたことで知り合った蘭越町の設備屋さんが、地元の山から切り出してきた落葉松が余っているので分けてあげてもいいと言ってくれたのです。早速見に行くと、これが赤みがかって非常に硬い、いい木なのです。なんの不満もなく、その中から直径20〜30cm、長さ3m60cmのものを80本分けてもらうことにしました。そしてこの設備屋さんに知り合えたことが、工具や部材の購入から作り方の相談まで、今後の作業の上で大変大きなメリットになりました。
しかし、考えてみると土地といい、本といい、丸太といい、準備段階では見事なほど順調に行き、まるでこの丸太小屋は僕に建てられる運命であるかのようでした。
ここで1つ問題が出てきました。丸太が太く、重くなったので、1人で持ち運ぶことが難しくなったのです。丸太を横に積んでいくノッチ組みだと、上の方ではユニックがないと作業できないのです。でも、ユニックを長期レンタルするとかなりの出費になるのでそれは出来ません。そこで工法をピーセン・ピースに変えることにしました。これは在来工法をログハウスに応用したもので、柱を立てて、その柱と柱の間に短いログを積んでいくという工法です。これだと、棟上げの時だけユニックをレンタルすれば、あとは1人でも出来ると考えたからです。
基礎作り(縄張り・やり方・根切り)
8月中旬。ついに作業開始です。
3.6m四方の小さなログなので基礎は独立基礎としました。作り方は基礎穴を掘り、特注の束石11本を立て、それを固定させるため周りに生コンを流し込み固めてしまう方法をとりました。
まず、基礎の位置を把握するため、基礎のセンターラインを示す縄を張る作業、“縄張り”。これは1辺3.6mの正方形の直角をきっちり出さないといけないので、正確な測量が要求されます。
次に基礎穴を掘る作業、“根切り”を行うが、その際縄張りの縄を外すと、基礎のアタリがわからなくなる。そこで杭と板と糸を使い、縄張りの上に基礎のアタリを出しておく。この作業が”やり方”です。(写真左) この時、水貫という横に張った板がすべて同じレベルで水平になっていないといけません。
そして糸の交差する真下に、縦横及び深さ60cmの束石用の穴11個と、深さ90cmのトイレの便槽用の穴を掘りました。穴はスコップを使い人力で掘ったが、この場所には昔トイレがあり、基礎用の穴は難なく掘れたが、便槽用の穴は深いので基礎の残骸に当たってしまい、コンクリートブロックで砕きながらの作業となり、むちゃくちゃ重労働となりました。この穴は、数日後の大雨で崩れてしまい、再び掘ることになりました。
それから基礎用の穴に砕石を20cm敷きつめ、ランマーで叩いて固め、その上に特注の束石を立てる。束石は2人でようやく運べるくらいに重く、穴を崩さないように、しかもまっすぐ糸に沿って正確に立てないといけないので苦労しました。この時、糸の高さに束石のてっぺんが来るようにすればBESTですが、僕の場合途中で少し変更が入ったこともあり、糸の高さより20cm高くなっています。ただし中央の大引きを乗せる束石だけは、他のものより20cm低くなっています。
最後に生コンを20cm流し込み、隙間が出来ないように棒でよくかき混ぜ、固まったら土を被せて、なんとか基礎の完成までこぎ着けました。(H10.9.1完成)
丸太搬入
基礎工事に平行して丸太を搬入しました。前出の設備屋さんのところにある300本の丸太から、使えそうなものを80本選んで、運送業者の運んでもらいました。当初、整理して置いてくれるという話でしたが、写真左のようにトラックから降ろすだけで帰ってしまったのです。仕方なく2人で2日がかりで、写真右のように整理しました。重いものは1本100kg以上あり、かなり苦労しました。(H10.8.25)
土台の作成・床張り
いよいよ丸太の刻みを始めました。一番太くて強そうな木を土台に使う。ピーセンピースで作る場合、丸太はすべて太鼓挽きにして使います。太鼓挽きとは、横にした丸太の上と下をフラットにカットすることをいう。断面が太鼓の形になるので、こう呼んでいます。分量が多いので製材所に頼むのが一般的ですが、コスト削減とできる事はすべてやると言う意気込みから、自分でカットすることにしました。ところが木が堅く、かなりの時間をこの作業に費やすことになりました。
土台の継ぎ手は”大入れアリ掛け”(写真右)で納めたが、角材ならともかく丸太をこのやり方で合わせるのはかなりしんどい。もっと簡単で頑丈な方法が他にもあることに、後になって気付いた。
他に苦労したのは、アンカーボルトの穴の位置を狂い無く開けることと、重い木を持ち上げてアンカーボルトに通すことでした。(H10.9.29完成)