まず知っておきたいこと!

田舎暮らしのメリット・デメリット

実際に都会を脱出し、田舎暮らしを実践している26名の方に率直な感想を伺った。


1.収入面は? 例外を除いて現金収入は少なくなる

 現金収入の金額の面だけを取り上げれぱ、都会よりもデメリットが大きいと答えた人の方が多い。その理由としては、「都会に比べて賃金格差が激しい」(長野県・造形家&山岳ガイド)、「会社勤めと違って、ポーナスが出ない」(千葉県・農業)「人口が少ないので、儲けるための商売は難しい」(山梨県・ペンション経営)など。
 田舎でどんな仕事を選ぶかによっても異なってくるが、都会でサラリーマンをやっていた時よりは大幅にダウンすることは免れない。
 一方、少ないながらもメリットがあると答えた人もいる。「当初は収入も減るが、出費が少ないことから、数年経ってみると収入が増えていた」(長野県・宿泊業)、「大きな仕事が増えた。モニュメントや公共事業の仕事がくるようになった」(山梨県・木工業)という幸運な人もいるが、これはむしろ例外として押さえた方がよさそうだ。
 田舎暮らしには、単にお金だけでは量り切れないさまざまなメリットがある。「農業は何より楽しい。お金は少しで十分」(茨城県・農業)と答える人も。好きな田舎で暮らし、それで収入が得られれば、こんな幸せなことはないと考えている人も多い。いずれにしても、お金を儲けたいと考えている人には田舎は向かないようだ。


2.生活費は? 都会に比べ支出はぐっと減る

 都会と田舎の大きな違いは土地の価格である。したがって、借家に住んで家賃を払うにせよ、土地を購入してローンを払うにせよ、金額も負担感もまったく異なってくる。住居費だけではない。固定資産税などの税金類も安くなるケースが多い。
 食費についてもメリットが大きいと答えた人が圧倒的に多かった。「農業をしているので、米や野菜類は買わなくて済む。野原や山などに自然に生えているものなどがあり、食費に関しては支出が滅った」(京都府・農業)という自給に近い生活をしている人や、畑をやっていなくても、近所の人から野菜がもらえる。米が安く買える」(愛知県・木工業)という声が多い。
 また、都会のように娯楽施設や商業施設がないので、ムダ使いをしない(できない?)ことも大きな理由となっている。「遊興費や娯楽費がほとんどかからない。水道、燃料(マキ)も自前なので、その分の支出もない」(北海道・野外学校経営)という人もいる。
 デメリットという面では、一部に「物価は高いのでは…」という声があった。たしかに、衣服類や電気製品などは、ディスカウント店の多い都会と違って、反対に高くなるケースが見受けられる。また、田舎では車が必需品だ。どうしても車の購入費や燃料代維持費が大きくなってしまう。「北国は暖房費(5力月間)や車の維持費(スタッドレスタイヤなど)が高くつく」(岩手県・食品加工業)と地域性の間題も見られる。生活費全体においては田舎が有利なのだが、すべてのものが安く上がるというようには考えない方がいい。


3.仕事の種類は? 田舎でしかできないこともある

 一般論でいえば、たしかに田舎は都会に比べて仕事の種類も量も少ない。しかし、独立自営の仕事となると話は違ってくる。農業、林業などの第一次産業は田舎でしかできない仕事だし、木工や陶芸などについては、むしろ田舎でやるほうが有利だといえるだろう。
 デメリットが大きいと答えた人も、そのほとんどがこのことを強調する。「種類・量とも決定的に少ない。しかし、手に技術を持っていれぱ、そんな事は関係ない」(山梨県・木工業)、「仕事は与えられるものでなく、自分で創造するものだと気がついた時は、都会ではおよびもつかないような仕事を始めることができる」(鳥取県・家具職人〉というような意見が多い。
 メリットを確実に受け取っている人たちも少なくない。「空間が広い。創作のイメージは、この空間の広さによるところが大きい」(長野県・陶芸家〉、「騒音などの問題で周囲へ気兼ねする必要がない。ここでやっている方が、東京、静岡、名古屋など都会のさまざまな顧客にめぐり会える」(山梨県・木工業)、「食品加工(スモーク)は都会ではできない。ここは水と空気がきれいで陽がよく当たる」(岩手県・食品加工業)などの声があった。
 やはり、自分のやりたい仕事に合った田舎を見つけた人、または、その田舎の自然や風土に合った仕事を選んだ人は成功への道を歩んでいる。こと仕事の種類・量については、田舎を見つけるうえで、それほど大きな問題ではなさそうだ。


4.住宅は? 安い価格で広い家が手に入る

 田舎の大きな魅力の一つは何といっても土地や住宅の安さ。同じ田舎といっても、場所によって相場は異なってくるが、東京の価格に比べて、10分の1、20分の1などの土地は、田舎であれば、どこでも探せるといってもいい過ぎではないだろう。
 今回のアンケートでもほとんどの人が「都会よりもメリットが大きい」と答えている。「購入した土地は1750坪。すぐに取り壊せるような家を造り、あっちこっち移動しながら住んでいる」(茨城県・農業)という豪快な人もいれば、「土地は200坪以上は必要。周りが広々とした田舎の環境で、小さな家で暮らすのはみじめな思いになる」(長野県・造形家及び山岳ガイド)とアドバイスしてくれる人も。
 ただし、広い土地、大きな家はそれだけ管理が大変になる。「たしかに都会では住めないような広さで生活できる。その代わり草取りなどの仕事も増える」(山梨県・木工業)と、広いことすべてがいいことではないとの意見もあった。
 このことは借家についても当てはまる。たしかに家賃は破格に安い。だが、「小さくて機能的な住宅が少ない。祝い事や仏事を全部自宅で行う習慣が残っているため」(福島県・無職)と、中古住宅のデメリット部分を述べる人もいる。
 予算の問題もあるが、ほとんどの人は土地だけを購入し、新たに家を建てているようだ。土地が安ければ、それだけ建物のほうへ予算をつぎ込める。住宅については、まず問違いなく田舎のほうが有利である。


5.周辺環境は? 豊かな自然が暮らしに潤いをもたらす

 周辺環境(ロケーション)については、自然の豊かな田舎の方が圧倒的にメリットが大きい。収入が滅ってもいいから田舎で暮らしたいという人が多いのは、やはり、都会では決して得られない豊かな自然が田舎には残っているからだ。
 今回のアンケートでも、周辺環境で都会よりデメリットが大きいと回答した人は一人もいなかった。ほぽ全員が納得のいく場所を選んでいるようだ。「広々とした田園の中、360度の展望で北アルプスなど信州の山々が見渡せる。夜空がきれいで天の川が美しい」(長野県・造形家及び山岳ガイド)、「周りは緑が豊かで、野鳥も多い。外で体験スモークができる。ハーブを育てたり、周りにある材料でリースを作ったり」(岩手県・食品加工)など、自然の中で暮らしを楽しんでいるという声がほとんどだった。
 ただし、「東京まで車で1時間半。街も近いので不便なし。物騒な時代、メリットのほうが大きい。ただ湖がきたない。開発が着々と進んでいるのが怖い」(茨城県・農業)という声もあり、場所によっては、自然が少しずつ失われている所もある。田舎を選ぷ際には、周辺に開発計画がないかどうかを知ることも大きなポイントになりそうだ。


6.交通は? 田舎の暮らしに車は必需品

 電車やバスなどの交通網という意味では田舎は不便である。家と家の距離は離れているし、商業施設や公共施設も遠く離れているケースが少なくない。したがって、車を持たなければ、田舎での暮らしは成り立たない。
 車さえあれば、都会よりも便利…と答えた人が何人かいた。「車で移動すれば、都会よりも田舎の方がスムーズ」(長野県・木工業)という声が多く、中には「田舎は交通渋滞がない。高速道路のインターチェンジが、車で5分の所にある」(長野県・写真家)という恵まれた場所で暮らしている人もいる。
 ただし、仕事や場所によっては、ただ車を持てばいいということでは済まない間題も出てくる。「仕事の打ち合わせ、納品、道具購入などで費やす時間が多い。当地は雪の多い時は1mほど積もるので、県道まで出るのに苦労する」(岡山県・家具作家)、「冬季は雪に閉ざされるので、自家用車も安全のため、四輪駆動、スタッドレスタイヤなどが必要」(福島県・自自業)という人たちがいる。
 またこの他に、「子どもの送り迎えなど、ほとんど車なので、歩く機会がなく体に良くない」(山梨県・木工業)と車暮らしの弊害を説く声もあった。


7.公共・商業施設は? 数は少ないが逆に便利な面もある

 施設が少ない、あっても遠いというのは田舎の宿命のようなものだ。しかし、それがまた田舎のいいところでもある。たいていの場合は車を使えば問題はないが、病院については、「救急病院のある街まで約50km、冬李は救急車でも1時間から1時間半はかかる」(福島県・自由業)、「近くに設備の整った総合病院がなく、いざという時、若干の不安がある」(山梨県・木工業)という声があった。
 田舎の方がメリットが大きい部分もある。たとえば、「都会のように、病院の待ち時間が長くなく、スーパーマーケットなどでの駐車待ちもない」(岡山県・家具作家)、「公共施設がいつでも使える」(山梨県・ペンション経営)という声に代表されるように、利用する立場で考えれば、意外に都会よりも便利な面も多いはずだ。


8.情報は? 田舎の方が情報をよく吟味できる

 テレビ、ラジオ、電話、ファックス、そしてパソコン。家庭用の電気・通信機器が普及した現在、情報の質・量については、今では都会も田舎もそれほどの差がないというのが実情だろう。
 というよりも、情報に取り囲まれているといった感のある都会よりは、田舎の方が的確な情報を得やすいのかもしれない。「必要な情報量は変わらない。逆に情報過多がないので困惑しないで済む。必要以外の情報は生活に支障をきたす」(長野県・造形家及び山岳ガイド)というような声が多く、中には、「テレビが映らないので情報の氾濫がなく、必要なものはパソコン通信を使って集めている」(北海道・木工業)というハイテク活用派もいた。
 「専門書が手に入りにくい」(岡山県・家具作家)とデメリット面を挙げる人もいたが、結局は、「自分のアンテナの張り方が大切なのであって、これは都会でも田舎でも同じ」(長野県・陶芸家)という声がすべてを語っている。与えてもらうのではなく、何が必要なのかを常に自問する姿勢が大切なのだといえる。


9.食材・食事は? 山の幸、海の幸、旬のものが味わえる

 自然が多いということはそれだけ自然の恵みも受けられるということだ。周りで山菜や木の実が採れるという理由だけで、田舎に移った人もいる。広い土地を手に入れれば、自分で野菜を作ることもできる。新鮮でおいしい食材がいつも身近にあるというのは、田舎の大きな魅力である。「何でも自給している。物々交換も成立している。地元民とも仲良くしているので、鮮度の良い魚から、野菜、パン、すべてお金が無くても入手できる」(茨城県・農業)「自家製の野菜と、山へ採りに行く山菜やきのこ、釣りのイワナなど自然の恵みに感謝している」(長野県・造形家及び山岳ガイド)というように、こと食材に関しては、田舎の方が圧倒的にメリットが大きいようだ。
 ただし、場所によっては魚介類が手に入りにくい所もあり、「山国なので、魚介類はやはり東京築地に集中する日本的状況ですから劣ります」(長野県・陶芸家)という声もあった。


10.遊び・趣味は? 周りすべてが遊びのフィールド

 アウトドア好きの家族だったら、まず間違いなく田舎の方が遊ぴのフィールドが広がるだろう。休日に車をとばして遠出することもない。帰りの渋滞もない。身近な所で、いつでも手軽に遊ぷことができるのだ。「春は山菜採り、湖が近いのでカヌーもやる。夏は海も近いのでサーフィン、秋はきのこ採りとキャンプ、冬はハンティング」(茨城県・農業)と四季折々の楽しみを満喫している人もいれば、「仕事が遊ぴや趣味の延長線上にあるので」(山梨県・キャンプ場経営)と答えた人もいる。遊ぴに関しては、ほとんどの人は満足しているようだ。
 しかし、演劇やコンサート、映画などが好きな人にとっては、田舎はちょっと辛いかもしれない。「東京は高度の情報社会なのだから、遊ぴが無限に広がるという感じ」(長野県・陶芸家)、「生の音楽会や芝居などを観るには、東京に出るしかない」(福島県・自由業)という声も。しかし、こうした人たちも、自然の中での遊びは十分堪能している。
 都会にいて、アウトドアを楽しむためには、お金も時間も労力もかかる。こうした点を考えるなら、やはり田舎の方が有利である。


11.子どもの教育は? 自然の中でのびのび育てる

 田舎暮らしはいいのだが、子どもの教育がちょっと気がかり…と思う人は意外に多いのではないだろうか。その最も大きな理由は、学校が近くになく、通学に困るのではないかということだろう。たしかに、アンケートの中でも通学の不便さを答えた人が多かった。「学校へ行くのにl時間の徒歩。これをデメリットと思うか否かは人それぞれの判断によるだろう」(長野県・陶芸家)という極端な例もあれば、車で送り迎えしている人もいた。
 しかし、その不便さをデメリットと感じさせない、教育環境の素晴らしさを強調する意見がほとんどだった。「児童21人に対して教員7人。とても贅沢」〈愛知県・丸太加工業)、「教員と子どもの関係が人間味がある。とても家族的な雰囲気で、わが子のためには、それだけでも良かったと思っている」(長野県・造形家及び山岳ガイド)、「自然の中で豊かな心を育てることができる」(京都府・炭焼き)というように、少人数教育と自然とのふれ合いで、伸び伸び育っているケースが多いようだ。
 ただし、高校・大学への進学には一抹の不安も。「進学においては、都会ほど熱してはいません。教育ママには物足りない所でしょう」(長野県・木工業)という意見もあった。小・中でしっかり育てられれば、後は、子どもの熱意、自立心に任せればいいと思うのだが、いかがだろうか。


12.家族とのコミュニケーションは? 家族で過ごす時間が多くなる

 家族のコミュニケーションの一番の基本は、「一緒にいる」ということだ。仕事の内容によって多少異なってくるが、田舎に移って家族一緒に過ごす時間が長くなったというケースが圧倒的に多い。つまり、それだけコミュニケーションも深まったのだといっていい。
 アンケートでは、「都会でも田舎でも変わらない」という人が一部いたが、「住宅と工房が同一敷地にあるため、いつでも子どもたちと一緒にいることができる」(北海道・木工業)、「このような環境でこそ共に行動できる。家族の思いやりが出しやすい。それこそ家族だんらんが生まれる」(長野県・造形家及び山岳ガイド)と、メリット面を強調する声がほとんどだった。


13.周辺の人たちとのつき合いは? 都会よりもつき合いは濃い

 田舎は、都会とは比べものにならないほど、住民同士のつき合いを大切にする。当初はわずらわしいと感じた人も、つき合いを続けていくうちに、やがて周辺の人々に受け入れられ、その田舎の本当の良さがわかってきたという声が多い。つき合いが深くなれば、それなりのメリットは出てくる。
 また、田舎には、必ずといっていいほど、昔から受け継がれてきた慣習や行事がある。かつては、「郷に入れば、郷に従え」だったが、今は必ずしもそうではないらしい。「最初から自分の主義主張をはっきりさせたうえで、つき合いをすると地元の人々も困らずに済む。いい顔ばかり見せていると、地域の関係がやっかいに感じられるようになる」(長野県・造形家及び山岳ガイド)という意見もあった。


14.老後の暮らしは? 老後も健康な暮らしができそうだ

 老後の暮らしが気がかりなのは、都会も田舎も同じであるが、福祉施設については残念ながら、田舎ではそれほど充実していない。しかし、健康を維持できれぱ、別に問題はないし、環境面からいっても田舎の方が健康的である。「生きがい」という意味でも田舎の方に軍配を上げる人が多い。「70歳以上でも、田舎には手先を使う仕事(農)がある。私は都会より田舎の方が老人にやさしいと思っている」(長野県・陶芸家)という声もあった。


15.暮らし全般は? 生きていることを実感できる暮らし

 お金が稼げて、物がいっぱい買えて…ということに価値を置いた暮らしであれぱ都会の方がいいに決まっている。しかし、そこには人間の心を癒す自然が欠けている。田舎で暮らしたいと思っている人は、お金よりも、かけがえのない自然を求めて移っていく。今回のアンケートに答えてくれた人たちもそうだった。そして、全員が田舎暮らしを選んだことに満足している。次の答えがすべてを物語っているだろう。「都会の暮らしは便利かもしれませんが、ただそれだけのことです。こちらは暮らしは楽ではありませんが、楽しいです。生きているだけのことが、とてもありがたく感じられます」(愛知県・丸太加工業)


アンケートの結果から

お金を儲けようと考えなければ、田舎の方が暮らしやすい

 メリット・デメリットというのは、それぞれの人の価値観によって異なってくるものであり、それだけで判断するのはなかなか難しい。今回のアンケートは、こうした設問を通して、田舎暮らしの実情を率直に語っていただくことが大きな目的だった。
 全体の印象としては、ほぼ全員が今の幕らしに満足し、将来の生活についても、それほどの不安は持っていないということだった。共通していることは、「お金を儲けようと考えなければ、田舎の方が暮らしやすい」と答えていることだ。「田舎だってお金が必要ではないか」という都会人もいるだろうが、出費の大きさが違うし、現金の代わりにいろいろなメリットがある。この点は、実際に田舎暮らしをしてみないと実感できないかもしれない。
 田舎で楽しく暮らせるかどうかは、やはり仕事の内容によっても大きく左右されそうだ。農業の他に、木工や家具製作など、田舎でやった方が有利、しかもその田舎でしかできないと思える仕事を選んでいる人は、収入面でも順調にいっているようだ。
 アンケートの回答から、自然の中で暮らす楽しさ、面白さが十分に伝わってきた。ただし、冬の巌しさ、交通の不便さなど田舎ならではのデメリットもある。周辺地域の開発がどんどん進み、自然が失われていくことに心を傷めている人もいた。暮らしてみなければわからない苦労もあるのだ。